39歳の備忘録的日記

39歳の男の思ったこと感じたこと

失われた建物 箱根小涌園 湯〜とぴあ

タイトルからしてワクワクする。この文字面だけで楽しくなるのは、きっと私だけだろう。

横浜在住の私からすると箱根はアクセスの良い上質なリゾートだ。車で一時間も走れば景色は一変。いつの間にやらビル群は消え、緑深い山々がそびえ立つ。今の時期は蝉時雨で青い空と深い緑と白い雲のコントラストが美しいはずだ。横浜では決して味わえない風景が広がる、私の大好きな場所だ。

 

箱根小涌園は説明不要の大型リゾートだ。正月の駅伝でも中継点であることから、知らない人はあまりいないだろう。

箱根小涌園の目玉である、ユネッサン。こちらも知名度の高い温泉テーマパークだ。箱根という温泉の地を活かし、子供も大人も楽しめるような変わった温泉、お風呂、ウォータースライダーやプールがいくつも点在している。

さてこのユネッサン。少し前までは湯〜とぴあという箱根の渓谷を利用した温泉施設が併設されていた。併せて、ユネッサンという名称だったのだが…

ユートピアとは理想郷のこと。

それをもじって湯〜とぴあという場所だったが、幼き私にはまさに理想郷だった。

まず湯〜とぴあの入り口近辺だ。

古き良き、脈絡のないお土産が点在している商店が多数あり、入浴剤と温泉の匂いもプラスされなんともワクワクさせてくれた。

チケット売り場は簡易的なものでスタッフが一人、立っているだけ。ここを通ればさあいよいよ湯〜とぴあだ。

高い天井はドーム型になっており、流行りのJ-POPが音が割れて響いている。サイドには小規模のホットスナックを取り扱う売店があり、チープな冷凍食品の出来上がりの匂いと暖色系の灯りが滲む。反対側はテーブルやイスが並び、みんなが思い思いにのんびり過ごしていた。中央には25メートルプールがあり遊泳、みんなバラバラに泳ぐのだ。室内の奥にはステージがあったが、私の記憶ではそこで何かのイベントをしていた記憶はない。

湯〜とぴあといえば、やはり屋外の温泉だ。このロケーションがたまらなく好きだった。現在は天悠という高級宿泊施設になってしまったが、ここを残すことはできなかったのだろうか…悔やまれる。

外に出れば独特の香りが鼻腔をくすぐる。目の前には小さな浴槽が二つ繋がっている。手前はやや熱めの泡風呂。その奥は真っ黒なお湯が溢れている。独特の香りの正体はこの真っ黒なお湯、コーヒー風呂だ。ここでちびっ子たちは大はしゃぎするであろう。飲み物がお風呂になるという、子供心くすぐるギミックがここにはたくさんあったのだ。

滝の打たせ湯や地熱を利用した石風呂を横目に登って行くと、鮮やかな緑色の風呂が現れる。緑茶風呂だ。ケミカルな緑色と入浴剤の香りが、湯〜とぴあに来たことを実感させられる。私はここの湯船が一番好きで、香りはもちろん、上を見上げれば木々の間からの青空、水面の音や人々のざわめき、時折聞こえる鳥の声、スピーカーから流れる別に好きではないJ-POPですら、癒しに感じることが出来た。その他にも酒風呂や岩風呂、サウナや水風呂、写真でよくみたワイン風呂などとにかく沢山の変わり種の風呂があり、楽しませてくれた。

前回のアービル横浜の記事でも書いたが、商業施設をバージョンアップをしないということは停滞もしくは落ち目を意味する。しかしながらここは、あえての古さが私の心をくすぐった。

湯〜とぴあに併設されたポリネシア風呂も忘れることが出来ない。おそらく温泉の地熱を利用して温帯の植物を育てていたのだろう。ドーム型の建物内部に植物が周りに位置され、中央部分に湯船がある。湯船の真ん中にビーナスを模した像があり、水瓶から湯が絶え間無く注がれる。なんてことない風呂だが、子供の頃の自分にとっては、まさに楽園、ユートピアだった。

 

湯〜とぴあを進化させたものがユネッサンだと思うが、湯〜とぴあを淘汰してしまった采配はどうなのか。おそらく採算はこれから確実に取れるだろう。もう湯〜とぴあのあの匂いや雰囲気は記憶にしかない。そこから見える風景ももう二度味わえない。まさに古き良き、がそこにはあったのだ。

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