39歳の備忘録的日記

39歳の男の思ったこと感じたこと

聘珍樓跡地

ゴールデンウィークも終わり、いつもの静かな平日だ。といってもここ中華街は観光地。食べ歩きの若者や修学旅行の学生でかなり賑わっている。

以前までは鬱陶しいなと感じていたが、最近はたくさん楽しんで思い出が出来るといいね。という考えに変わった。彼らなりに楽しみ方があるだろうし、楽しみたくて中華街を選んだのだ。ルールやマナーを守ってくれれば街も潤うだろう。

 

さて、そんな賑わいが絶えない中華街大通り。

ある場所だけ賑わいからすっぽり外された箇所がある。

ここ聘珍樓跡地だ。

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人が踏み入れることが無くなった箇所は一気に風化し、雑草や以前植っていた笹が茂っている。ビルの壁面は埃によって線ができて、日焼けでしらっちゃけた色に変わっている。

中央にある、空っぽの額縁は大きく金文字で聘珍樓の看板が堂々と飾られていたが、閉店してすぐに取り外されたようだ。大通りに面していた屋号の大きなネオンはあっという間に外され、ここが聘珍樓であったことを忘れてくれと言わんばかりの速さだった。

正面に大きくとられた窓は3階と4階にあった吹き抜けの宴会場のものだ。天気が良く、青い空が反射しているが、おそらく中も陽光が入り誰もいない宴会場を明るく照らしていることだろう。

 

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こちらは正面から見て、左側の小道側からの元聘珍樓の側面だ。

やはり雨で汚れが幾つもの黒い線になり、建物の経過を感じさせるものとなっている。一番上にある小窓は七階の特別室のもの。この小窓から、この小道の行き交う人々をよく見ていた。二階部分の細長い窓は日当たりの悪い二階に少しばかりの陽の光を入れてくれた貴重なもの。忙しかった時は時間の感覚が無くなり、体内時計が狂うため、少しの陽の光もありがたかったものだ。

特殊な形の土地に立つこの建物は同じく特殊な形をしており、導線もまた極端に狭いところがあったりと、働く側からしても不便な点も多々あった。大きな室外機は客室のものであり、我々のバックヤードは空調が無く、真夏は地獄のような暑さだった。

 

 

なぜ今更、こんなことを書いたのか。

単純に私がこういった半分廃墟のようなものだったり、無くなりそうなものが好きというのもあるが、やはり思い入れがあるからだ。これは私だけでなく、聘珍樓の消費者にも言えることであり、その証拠に大通りを歩いている人の何人かが、私のように跡地を写真や動画に収めていたのだった。

そしてもう一つ。裏手に従業員出入り口と以前使われていたゴミ捨て場。そして、ビルのメンテナンス用の出入り口がある。このメンテナンス用の出入り口から作業着を着た作業員が出てきたのだ。これが何を意味するかは全くわからない。ただの定期的なメンテナンスなのかもしれないし、あるいはどこぞのレストランが近い将来入るかもしれない。後者に於いては全く情報も無いし、予測の範疇を全く出ない。ただ、メンテナンスにしてもほんの少しでも動きが見れたのは、嬉しかった。

 

今日も主人無きこの建物は、中華街を見下ろしながら、新しき主人を無言で待ち続けるのだ。