小春日和という言葉に相応しい一日。
爽やかな風が吹き、キャンペーン中ののぼりを揺らす。大きく取られた開放的な窓からは陽光と隣の公園の緑が眩しい。平日の朝だと言うのに、店内はほぼ満席。店員も忙しなくバッシングをしたり、オーダーを取ったりと動き回る。客は主婦が多いが、私のような男性の一人客も散見される。
今日で33年間の幕を閉じるそうだ。このニュースを地方のウェブサイトで知り、たまたま休みだったので急いで訪れたのだ。
本牧という土地は元々好きだが、本牧在住の彼女がいたことがあり、ますます好きになった経緯がある。当時は若かったので、夜通し遊んで24時間営業だったこのデニーズに明け方、モーニングを取りに来たことがあった。
ある夏の夜、本牧山頂公園でたっぷり話し込んで汗でベタつく重たい身体を引きずり、ソファにどかっと掛ける。店内はクーラーが効いており、素晴らしく涼しい。静かなクラシックがBGMで心地よい。私と彼女はデートが楽しかったのか、ニヤニヤと締まりのない顔で、一日を振り返りながらモーニングを堪能した。二十代前半の万能感と生まれたての朝日、目の前にいる大好きだった彼女と新たな休日の始まりは、世の中の不安や心配を全てその時だけは、かき消してくれたのだ。
思い出は少ないが、とてもとても楽しかったと記憶している。あれから10年以上経った。風の噂ではその彼女も母になったそうだ。
ロードサイド店らしく、昼前にはサラリーマンや現場仕事の人達もランチに訪れてきた。
さて、そろそろ退店しよう。
しっかりとここからの風景と雰囲気を焼き付けて。ほんの少しの思い出のお店。ありがとうございました。
33年間お疲れ様でした。