かにたべたーーい!!!
インザムードが賑やかしく流れ、ジューシーなロブスターやカニの映像が画面いっぱいに溢れる。
これはおれが初めて知った、幼少期に流れていたレッドロブスターのCMだ。カニ食べたーいなのに、レッドロブスターとはこれ如何に。兎も角、見たことも聞いたこともない、真新しいレストランが出来たのだ。そして前述のCMは繰り返し流され、子どものおれは洗脳され、特別、甲殻類は好きでもなかったが親にねだって行きたい行きたいと駄々をこねた。しばらく経ち、マイカル本牧に知人の家族と一緒に行くことになり、近隣にあるレッドロブスターにも立ち寄ることになった。
漁港や漁船をイメージさせる薄暗い店内。エイジングされたかの様な木やロープを使ったテーブル。活気が溢れ、香ばしい食欲をそそる香りが充満している。この場所もマイカル本牧同様に全てが輝いて見えた。時はバブル真っ只中。当時の値段は全く覚えていないが、エビやカニをメインにしているのだ。安くはないであろう。それでも客席は埋まっており、我々の家族もテーブルいっぱいに料理が並んだ。あれだけ楽しみにしていた肝心の料理の味は残念ながら覚えていない。だが、食事の空気は間違いなく楽しく、夢のようなきらきらとした時間を過ごせた。
大人になってからは付き合っていた彼女と食事をした。幼少期に訪れた時の席ではなく、通り沿いの明るい席だった。彼女との食事の時間もまた格別だったのだが、最初に訪れたインパクトと興奮は超えることが出来なかった。
そして今。
世帯を持ち、こうやって1人の時間がある時に、昔の思い出をなぞるかのように本牧に来る。今日はここ、レッドロブスター本牧だ。
11時きっかりに訪れ、貸し切り状態の店内に案内される。サービスの男性はきりっとしていて、明るい窓側と落ち着いた奥まった席とチョイスができる旨を伝えてきた。迷ったが、幼少期に座った席の近くに座り、注文をする。
近くの席ではママ友のランチ会の様なものが開かれ、本牧というワードが飛び交う。きっと地元の人たちなのだろう。平日の昼間に穏やかな空気が流れる。少し冷めてしまったガーリックシュリンプを思い出と共に噛み締めながら、変わらない空気も味わった。